ぼくは奥さんと付き合うことになった。
ぼくが奥さんを好きになった理由は、細くて可愛くて元気で、しっかりしている「まともな女の子」だったからだ。でもあとから気づいたのは、奥さんがぼくを好きになった理由は、ぼくが「まともだから」ではなかったということだった。
奥さんは、ぼくが「めったにいない珍しい面白い人」だから好きになったようなのだ。たしかに、引きこもっていた過去や、スクールカーストで下位にいたこと、いわゆる“普通の人”ではない人生を歩んできたぼくの個性が、奥さんにとっては魅力的だったのかもしれない。
だからなのか、奥さんと一緒にいると、ぼくは飾らずに自然体でいられた。自分を大きく見せる必要も、無理して背伸びする必要もなかった。
中学のとき、ある先生に「きっといつか、君にぴったりのお嫁さんが見つかるよ」と言われたことがある。あのときの言葉が、もしかしたら現実になったのかもしれない。
それまでのぼくは、女の子に対して「こうあってほしい」「可愛くいてほしい」と、相手に求めることばかりしていた。でも奥さんに対しては初めて、「自分がこの人に何をしてあげられるだろう」と考えるようになった。
「ギバー」「マッチャー」「テイカー」という言葉がある。ギバーは与える人、マッチャーはもらったら返す人、テイカーはもらう人。いちばん成功するのはギバーだという。
ぼくは奥さんに対して、初めてギバーの姿勢で関わることができた。そういう変化があったからこそ、奥さんもぼくを選んでくれたのかもしれない。
みなさんも、自分の個性を受け入れてくれる人、そして「この人には何か与えたい」と思える人と出会えたとき、恋はうまくいくんじゃないかと思う。
そんなこんなで、ぼくと奥さんは付き合いはじめた。
奥さんはお出かけや旅行が好きで、いろんなところへ連れて行ってくれた。コテージに泊まった時は楽しかった。
一番大きな旅行はカナダだった。奥さんは長期休みを使って海外に行くのが趣味で、海外経験がなかったぼくにも「行ってみたら?」と声をかけてくれた。親も背中を押してくれて、ぼくは初めての海外旅行に挑戦することになった。
行き先はカナダ。安全だし、ナイアガラの滝も見られる。食べ物は肉ばかりで、途中で和食が恋しくなり、日本人が集まる和食店にも行った。そんな風に、奥さんとの出会いは、ぼくの世界を大きく広げてくれた。
やがて、ぼくは本格的に奥さんと一緒にいたいと思うようになった。その気持ちを伝えると、奥さんは「結婚するなら就職しないとね」と、まっすぐに言ってくれた。
当時、大学の卒業も間近で、卒業論文を書きながら、ぼくは次の3月に卒業できる見込みだった。だから、ぼくはついに就職活動をはじめることになる。
次回は、「初めての就職活動」のお話です。
🌸 引きこもりだったぼくが、通信制大学で仲間と出会い、少しずつ未来に向かって歩き出した8年間。その全体の流れをまとめた記事はこちらです 👉 https://is.gd/0wVLup
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