引きこもりだったぼくが初めて社会で働いた話

大学編

22歳のころ。
リッキーやたんくんと過ごす日々は楽しかったけれど、実家で暮らし、働かず、大学の単位もギリギリだったぼくに、継母がふとこんなことを言いました。

「ひとり暮らししてみたら?
 もしくはアルバイトして、世の中がどう動いているか見てみなさい」

一人暮らしなんて無理だと思っていたので、アルバイトをしてみることに決めました。
(のちに「お金は出すつもりだった」と聞いて、やってみればよかったな…と少し後悔したけど)


面接10連敗と不思議な自信

最初に面接に行ったのは本屋さん。
だけど、履歴書の書き方がなっていないと、門前払い。

次に行った靴屋さんでは、
「路上ライブで声を出しているんです!」とアピールしたものの、
「いや、声出てないから…」と落とされました。

その後も、合計10社受けてすべて不採用。
でも、不思議と気落ちはしていませんでした。

「継母に言われたことを実行できている」
それだけで、なぜか少し自信になっていたんです。

何度も面接を受けるうちに、履歴書の書き方、面接のマナー、服装も少しずつ学べていきました。
今思えば、あの10連敗は“必要な学び”だったのかもしれません。


スーパーでの初バイト。はじめての労働

そんな中、採用されたのが近所のスーパーでした。
「いつから来れる?」と聞かれて即採用。
ようやく、ぼくの初めてのアルバイトが始まりました。

夜型生活だったので、最初のシフトは14時〜20時、週3〜4日。
初日は品出しだったけど、今までの引きこもり生活から一転、
たった一日で筋肉痛になるくらい体を動かしました。

でも不思議と「店員さん」という仮面をかぶるのは苦ではなく、
接客も思ったよりいやじゃなかった。
お客さんも、従業員さんも、みんないい人で居心地がよかったです。


ピリつく店内、そして仲間の優しさ

3ヶ月ほど経ったころ、店長が変わりました。
人件費を使いすぎたとかで、何人かが解雇されてしまいました。

ぼくは若さとシフトの融通が利くことで残れたけれど、
新しい店長はとにかく厳しくて、店の空気もピリピリしていきました。
辞めていくパートさんもいて、ちょっとつらかった。

でも、ぼくは思いました。
「ここを辞めたら、また以前の自分に戻ってしまう」

その思いだけで踏ん張れました。

高校生のバイト仲間が「うちらはのんびりやりましょ」って言ってくれて、
すごく救われたのを覚えています。
仲間と助け合えたから、なんとか続けられたんです。


最後の店長と、働きやすいスーパーでの5年間

しばらくしてまた店長が変わりました。
今度の店長は、人柄がよくて、自分からどんどん動く人でした。

その人がこんなことを言ってくれたんです。

「自分が積極的に働けば、パートさんも続けてくれて雰囲気もよくなる。
 そうすれば結局、自分も楽になるんだよ」

その言葉どおり、店内の雰囲気は明るくなり、
人も定着して、ぼくもすごく働きやすくなりました。

そして気がつけば、ぼくはこのスーパーで
大学卒業までの5年間アルバイトを続けることになるのです。


🌱あとがき

10社落ちたけど、自分なりに一歩踏み出したこと。
厳しい時期も乗り越えて、仲間や店長に救われたこと。
すべてが、社会に出る準備になっていたんだと思います。

「社会を知る」という言葉の意味が、
このアルバイト生活のなかで、ぼくにも少しわかった気がしました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました