路上ライブと、音楽と、リッキーと
引きこもりから少しずつ抜け出していく中で、友人の存在が大きかったという話は前に書きました。
今回は、その中でも特に大切な存在だったリッキーについてのお話です。
リッキーは音楽が大好きで、ギター・ドラム・ピアノ・サックスなど、いろんな楽器に挑戦していました。
その影響で、ぼくも「ちょっとやってみようかな」と思うようになったんです。
ぼくが二十歳くらいのときに買ってみたのは、フォークギター。
最初はもう本当に指が痛くて、あかぎれになって血がにじんだこともありました。
でも、ギターをかき鳴らしながら歌う時間は、不思議と心が自由になっていく感じがして、すごく魅力的だったんです。
リッキーと一緒に、河原でサックスを吹いてみたり、音楽スタジオを借りてセッションしたり。
彼はエレキギター、ぼくはドラムを叩いて…音を合わせるたびに、心も少しずつ開いていったような気がしました。
中でも思い切って挑戦したのが「路上ライブ」。
当時は「ゆず」や「19(ジューク)」が流行っていて、ぼくらも真似をしてギター片手に外へ出ました。
通りすがりの人たちの多くは、ぼくらに目もくれずに通り過ぎていきます。
正直ちょっと寂しかった。でも、その中に時々、立ち止まって聴いてくれる人もいるんです。
あのときの嬉しさは、今でも忘れられません。
人前に立って歌うという「目標」があると、練習にも自然と身が入ります。
ギターのコードが少しずつ弾けるようになったり、歌が安定してきたりすると、
「できるようになってきた」っていう小さな成功体験が積み重なって、自信にもなりました。
そして何より、音楽に夢中になってるときって、将来の不安とか、引きこもっていた過去とか、
そういうモヤモヤを忘れることができるんですよね。
今はあまり路上ライブを見かけることも少なくなりました。
地域によっては迷惑条例などもあるので難しいかもしれません。
でも、カラオケや音楽スタジオ、広い河原など、音を出せる場所は探せばあります。
「楽器なんてできないよ」って思ってる人にも、ぼくはぜひ一度、触ってみてほしい。
ドラムでも、ギターでも、歌でもなんでもいい。
音に触れることで、心が少しずつ動き出すかもしれません。
あの頃のぼくにとって、音楽とリッキーとの時間は、まぎれもなく「やってみてよかった」ことのひとつです。
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