高校を中退し、家に閉じこもっていた17歳のぼくのもとにやってきた、一匹の小さなコーギー。
名前はバウ。
やんちゃで負けず嫌いで、なにより朝が大好きな彼は、ぼくを10年ものあいだ外に連れ出してくれました。
後に知った「朝散歩の効果」──
でも当時はただ、バウと過ごすその時間が、何より大切だった。
これは、ひとりと一匹が紡いだ10年の、静かであたたかな物語です。
🐶 はじまりは、17歳のぼくと一匹の子犬
高校を中退し、部屋にこもるようになった17歳のぼく。
当時は毎日がぼんやりしていて、朝も夜も関係なく過ごしていた。
そんなある日、父と継母が「運動不足になるから」と言って、
小さなコーギーの子犬を連れてきた。
名前は「バウ」。
少し小柄な雄のコーギーで、とてもやんちゃ。
犬同士の遊びでは決して負けない、気の強さと賢さを持っていた。
🐾 散歩が、ぼくを少しずつ外へ連れ出してくれた
最初は、正直そこまで気持ちが入らなかった。
「散歩はぼくの役目」と言われて、渋々リードを持って外に出た。
でも、だんだんと、バウの短い足で全力疾走する姿、
うれしそうに振り返る表情。
そんな一つひとつに、ぼくの心がほぐれていった。
雨の日も雪の日も、熱があっても、散歩に出た。
バウが「おい、ぐずぐずしてんなよ、行くぞ!」とでも言うように
吠えてリードを咥えてくる。
彼の存在が、ぼくを外の世界へ連れ出してくれたんだ。
🌞 あとから気づいた、朝散歩のすごい効果
40歳を過ぎて、樺沢紫苑先生の本で「朝散歩」の効果を知った。
朝日を浴びることでセロトニンが活性化し、
そのセロトニンが夜にはメラトニンに変わり、睡眠を促す。
日光によってビタミンDも活性化し、免疫機能が高まり、
体内時計が整う。最低限の運動にもなる。
そんな科学的に裏付けされた「心と体にいいこと」を、
ぼくは10年間、知らず知らずのうちに、
バウからもらっていたのだ。
彼がいたから、なんとか持ちこたえた。
外に出る理由が、リードの先にいてくれたから。
🌈 天国に行っても、君はぼくの一部
バウはぼくが30歳のときに、天国へ旅立った。
抱きしめながら泣いたことを今も覚えている。
でも、ありがとうって気持ちのほうが、やっぱり強い。
バウ、10年間、朝の散歩をありがとう。
あの時間が、ぼくを少しずつ生きる方向へ連れ出してくれていたんだね。
誰かと一緒に歩いた記憶は、心の奥で灯のように残っていきます。
バウとの10年が、あの頃のぼくを少しずつ変えてくれたように。
あなたのそばにも、そんな「小さな光」がありますように。
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