【看護学校編】① 第二の青春、人生を変えた決断
訪問入浴介護の現場は、思っていたよりもずっと過酷だった。
介護士2人と看護師1人の3人1組で、1日何件ものお宅を回る。高齢者の身体を洗い、着替えを整え、次の現場へと急ぐ日々。特に困ったのは、看護師が本当に足りないことだった。急な欠勤が出るとシフトは大混乱、代わりがなかなか見つからず、派遣看護師を依頼することも…..
そんなとき、ふとしたきっかけで、同じ職場の男性看護師が社会人から看護師になったと聞いた。話を聞いてみると、まったくの未経験から勉強を始め、30歳手前で看護師資格を取得したという。
「…自分にもできるかもしれない」
そんな思いが芽生えた。
元々、医療の世界には興味があったし、現場に出るほどに、もっと深く関われたらという気持ちが強くなっていた。収入面でも、知識面でも、自分自身がもう一歩成長するために――看護師になりたい。
当時、奥さんはすでに医療職で働いており、話すとすぐに理解を示してくれた。
「やってみたらいいよ、全力で応援するから」
その一言に背中を押されて、ぼくは決意した。看護師を目指して、看護学校を受験することを。
【看護学校編】② 仲間と夢を追いかけて。青春の再スタート
介護の現場で看護師という存在の大切さを痛感し、
「ぼくもなりたい」――そう決意したあの日から、日々が変わっていった。
生活のため、施設でパートとして働きながら、夜は予備校に通って看護学校受験の準備をした。
勉強から離れていた時間も長かったけれど、目指す道がはっきりしているぶん、がむしゃらに頑張ることができた。
そして、ついに看護学校に合格。31歳にして新しい一歩を踏み出した。
そこには、18歳から40歳までの幅広い年齢層の仲間たちがいた。
高校卒業してすぐに入学してきた子もいれば、ぼくのように社会人経験を経て入学した人も。
だけど、みんなに共通していたのは、「看護師になりたい」というまっすぐな気持ちだった。
明るくて世話好きな同期たちに囲まれ、年齢の壁はすぐに消えていった。
授業のあとは図書室で一緒に勉強し、週末には飲み会やお出かけ。
一緒に笑い合い、泣き合い、励まし合う日々は、10代の頃に経験できなかった“青春”そのものだった。
一番つらかったのは、やっぱり実習。
厳しい指導や命と向き合う重みで、心が折れそうになることもあった。
でも、そんな時は仲間がいた。
「大丈夫、ここまで来たじゃん」「いっしょに乗り越えよう」
その言葉に何度救われたかわからない。
そして、看護学校2年生の時、長女が誕生した。
生命の神秘を目の当たりにして、胸がいっぱいになった。
クラスの仲間たちも、赤ちゃんの話を嬉しそうに聞いてくれ、授業中もさりげなく支えてくれた。
この3年間は、まさに人生を取り戻す時間だった。
夢をもって学び、仲間と歩んだ日々は、自分にとって何よりも誇りになった。
もともとは介護出身だったこともあり、卒業後は老人施設への就職を考えていた。
でも、学びを深めるうちに「もっと幅広い看護を身につけたい」という思いが強くなっていった。
そして、急性期の病院への就職を決意。
いよいよ、看護師としての第一歩がはじまる――。
次回、「看護師奮闘編」へ。命の現場で、戸惑いながらも全力で向き合ったぼくの挑戦を綴ります。
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