世界が少し広がった日。チャットで出会った「あの子」との思い出

大学編

大学時代、僕はパソコンでレポートを作成する日々を送っていた。
課題に追われながらも、どこか孤独を感じることが多くて。

そんなとき、僕にとってのちょっとした居場所になっていたのが“チャット”だった。
当時はSNSやLINEはなく、インターネットの掲示板やチャットで、知らない誰かと会話をすることが、少しだけ心を軽くしてくれた。
引きこもっていた過去も、そこでは赤裸々に話すことができた。顔が見えないからこそ、気楽に打ち明けられることもあったのかもしれない。

そんななか、ある日「中学生の女の子」と個別にチャットをするようになった。
年齢は離れていたけれど、その子は優しい雰囲気で、言葉の選び方もどこか大人びていた。
話していて気が合うな、と感じた。なんでも自然に話せた。

やがて、お互いの家が比較的近いとわかり、直接会ってみることになった。
初めて電話をしたときは、お互いにちょっと照れくさかったけれど、やっぱり「優しい子だな」という印象を持った。

待ち合わせ場所には、その子が友達を連れてきてくれて、3人でマクドナルドに入った。
年齢差もあるし、ちょっと不思議な空気ではあったけど――久しぶりにできた“リアルな友達”という存在が、僕にはとても嬉しかった。

その後も何度か2人で会い、公園で話したり、アイドルの話をしたり、彼女の学校の学園祭に遊びに行ったり、映画を観たりした。
特別な感情があったわけじゃないけれど、不思議と心地よい時間だった。

関係は、彼女が高校生になってからもしばらく続いた。
だけど、自然と連絡は取らなくなっていった。

最近、偶然SNSで彼女が母親になっていることを知った。
あの子との、あの時間はなんだったのか――
はっきりした言葉にはできないけど、確かに僕の世界を広げてくれた存在だった。

引きこもっていた僕にとって、人とつながることの温かさや、ちょっとした外の世界との接点。
その大切さを思い出させてくれる、そんなエピソードだったのかもしれない。

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