看護師不足に苦しんだ訪問入浴の現場。そして、ぼくは次の一歩へ進んだ。
結婚して、ぼくの毎日は大きく変わりました。
家庭を持ったことで、心が安定し、仕事にもますます精が出るようになったんです。
仕事にも少しずつ慣れてきて、スタッフや利用者さん、ご家族との信頼関係も築かれてきました。
「この仕事でやっていけるかもしれない」――そんな手応えを感じるようになっていた頃、ある問題が深刻化していきました。
それは、看護師の不足という現実でした。
正社員の看護師がすぐに辞め、代わりが見つからない日々
ぼくが入職してまもなく、正社員として勤務していた看護師が突然退職しました。
その後はパートの看護師さんでなんとか回していたのですが、求人を出してもなかなか人が来ません。
たまに応募があっても、運悪くすぐに妊娠されて辞めてしまったりと、継続的な人材確保が本当に難しい状況でした。
やがて、派遣会社に依頼して派遣看護師に頼るようになります。
けれども、派遣看護師は会社へのマージンが発生するため、人件費がとても高くなってしまいます。
高すぎる人件費と、崩れていく信頼関係
社長からは「人件費が高すぎる」と指摘され、
現場では一から業務を教える負担が増え、
新人との連携不足で利用者さんやご家族との信頼関係がうまく築けないこともありました。
現場は常にバタバタで、心がすり減る毎日。
訪問入浴の仕事自体は好きだったけれど、看護師の調整に追われる日々に、ぼくの心は次第に疲弊していきました。
同じ会社の訪問看護師たちも、自分たちの仕事で精一杯で、訪問入浴まで手伝う余裕はなさそうでした。
支えてくれたのは、奥さんとの時間だった
そんな中で、ぼくを支えてくれたのは奥さんとの穏やかな時間でした。
食卓を囲んで話す何気ない時間が、ぼくにとって生きがいで、癒しの時間だったんです。
でも、ある日――
ぼくの心は限界を迎えてしまいました。
どうしても苦しくなり、ついに社長へ電話しました。
「もう、訪問入浴の仕事は限界です……」
訪問入浴のサービスは終了、でもぼくはこの会社で働き続けることに
社長は静かに話を聞いてくれて、そして即決しました。
すべての訪問入浴の利用者さんを、他の事業所へ引き継ぐことを決めたのです。
もともと、利益に対して人件費が見合っておらず、訪問看護部門も手一杯で、
訪問入浴の継続は難しいと社内でも検討されていたようでした。
ぼくの限界が、そのタイミングでの決断につながったのです。
幸いにも、この会社では施設やデイサービスなど他の部門もあり、
ぼくは異動という形で、引き続き働き続けることができました。
そして、ぼくは看護師になる決意をした。
そして、ぼくは看護師になる決意をしました。
この経験が、ぼくにとって大きな転機になったのです。
人手不足に悩み、看護師がいないことで現場がうまく回らなくなる――そんな状況を何度も目の当たりにしたことで、
「自分が看護師として現場に立ちたい」という想いが、少しずつ心の中に芽生えていきました。
訪問入浴という仕事を通して、人の暮らしに寄り添うことのやりがいや、
誰かの役に立てる喜びを知ったぼくは、今度はその“支える側の中心”として関わりたいと思うようになったのです。
次回は、ぼくが看護師を目指すことになったきっかけや、その背景にある気持ちをくわしく書いてみようと思います。
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